現役ファンドマネージャーの徒然帳

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アセットマネジメント(資産運用会社)とは何ぞや

こんにちは

 

昨今は、NISAなど政府主導での投資促進活動が活発化しており、良くも悪くも世間から注目を浴びることになった投資信託やETF。今回は、私が働く投資信託の運用や組成を行うアセットマネジメント(資産運用会社)について、紹介したい。 

 

 

 

アセットマネジメントとは

アセットマネジメント(資産運用会社)とは、名前の通り、アセット(資産)をマネジメント(管理)する会社である。お客さんである、個人投資家や、年金法人・金融法人などの機関投資家のお金を受託し、それらをファンドマネージャーが株や債券、オルタナティブアセット(不動産、コモディティなど)に投資することを生業とする。また、アセットマネジメント自身も年金基金(GPIF)などと同じ「機関投資家」に分類される。

 

基本的に、個人投資家は投資信託(正確には公募投資信託)、機関投資家は投資顧問や私募投資信託という形で投資の契約を行なっている。ちなみに、投資顧問と投資信託は、それぞれ別の業界法人(日本投資顧問業協会と投資信託協会)があり、投資顧問と投資信託の両方やりたいアセットマネジメントは両方の協会への加入が必要となる。

 

広義では、不動産などの資産管理を行うプロパティマネジメントもアセットマネジメントに分類されるのだが、私が言うアセットマネジメントとは、株や債券等を投資対象とする会社のことを指すことにする。

そして、アセットマネジメントは長いので、以下(今後全ての記事において)アセマネとする。

 

何で利益を稼いでいるのか

さて、そんなアセマネだが、何で収益を上げているのだろうか?

答えは簡単、顧客から預かっている資金から運用手数料として、一定割合いただいている。

 

ざっくり言うと、運用手数料は、パッシブ運用の方がアクティブ運用よりも安く、国内を投資対象とする資産の方が海外のそれよりも安くなる。

また、同じスキームであれば、投資顧問契約の方が公募投資信託よりも安くなる傾向にある。

 

投資顧問においては、顧客の要求するリターン(要求収益率)を上回ると、成功報酬という形で、追加の手数料をいただける場合もあり、ファンドマネージャーは、なんとかして目標を達成しようと必死である。ちなみに、3〜5年くらい要求収益率を達成できないと、契約解除となる可能性もあり、社内評価も落ちるので、それもあって必死である。

 

ちなみに、何かと話題になるGPIFだが、基本手数料をアクティブ運用の手数料をパッシブ運用と同水準まで下げてしまった一方で、資料作成などGPIF対応はかなり面倒くさいので、コスパ的な観点からは受託するインセンティブが全くない。あえていうなら、GPIFから受託してますよー、という外部の宣伝に使えるため、受託を目指すアセマネは多いが、一部の大手アセマネはそんなことしなくても、知名度と評判、過去の運用実績で十分広告になるため、GPIFからの受託を目指さなく会社もあるようだ。

 

どんな業務があるのか

運用会社に就職する人の大部分は運用フロント(ファンドマネージャーやアナリストなど)での業務に憧れている。ただ、運用会社とはいえ、一つの会社であるため、運用フロントだけでなく、営業、経営企画やミドルバックなど、業務は多岐に渡る。

そこで、ここでは、アセマネの業務について簡単に説明する。

 

①運用フロント

いわゆるファンドマネージャー(会社によってはポートフォリオマネージャーとも)、アナリストが該当する。簡単にいえば、顧客の資金を資産に投資する実働部隊。

運用会社における花形部門である。

 

②運用ミドルバック

パフォーマンスやリスク計測、運用補助など、運用フロントを支える部門。ちなみに運用会社のトレーダーはここに分類される会社もある。

地味だが、リスク計測などは専門性と数理的思考が求められ、理系が新卒で配属される場合が多い。

 

③営業フロント

いわゆるリレーションシップマネージャー(RM)。投資信託であれば、銀行や証券の販売会社、投資顧問であれば、年金法人や金融法人などと直接やりとりする人。

年金法人から資金を獲得するときや新しく投資信託を売ってもらう時など、運用実績はもちろん大事だが、RMの、顧客との関係性や営業力なども同じくらい(下手したらそれ以上)重要であり、ファンドマネージャーも頭が上がらない。

 

④営業ミドルバッグ

販売用資料作成やカスタマーサービスなど。最近は動画配信や、ホームページのコンテンツ拡張に取り組んでいるアセマネが多く、仕事は増加傾向にある模様。

 

⑤その他

経営企画、人事、経理財務、法務等。運用会社も一つの株式会社であるため、こうした業務ももちろん存在する。新卒の配属リスクも高くはないが、多少あるため、就職を考えている人たちはその点を理解しておく必要がある。

  

どんな人が働いているのか

アセマネで働く人を採用別で見ると、①新卒採用組、②中途採用組、③親会社出向組、の大きく3パターンがある。

 

①新卒採用組

会社によってまちまちだが、一定数いる。しかし、就職前と後の仕事に対するギャップ、運用配属への思ったより高い壁など様々な理由から、入社して早々に転職していく人たちも少なくない。正直、新卒におけるアセマネ就職は、金融コース別採用に次ぐ狭き門であるため、非常にかわいそうである。

また、出世しても部長クラス止まりであり、役員はほぼ無理であるため、一定年数会社に残っている人たちも、如何にファンドマネージャーとしていいパフォーマンスを出し、良い待遇で転職していくことを考えている。

 

②中途採用組

他の会社で箔をつけて高待遇で同業他社から転職してくる人、証券会社などセルサイドから運良く転職できた人、などなど様々な経歴を持っている人が集まるグループ。共通する部分としては、大半は金融経験者である。ヘッドハンティングに近い形で採用される人は、高額で雇われる人がほとんどだが、社内の人事制度改正などとともに下げられる場合も散見される。

アセマネ業界自体、人材の流動性が非常に高いため、会社によっては、中途採用がボリューム層であることもある。こうした業界事情から、会社にもよるだろうが、中途採用の人たちが会社内で浮くと言うことはほとんど聞いたことがない。

 

③親会社出向組

HDやFGの子会社のアセマネである場合、漏れなくこのグループの人たちが会社のマネジメント層である。たまーに、ほとんどアセマネや運用に関する知識がないのに、運用部門の部長などになる場合があるのだが、これは非常に迷惑である。待遇も親会社のものを引き継いでいるため、同じ仕事をしていても、待遇に大きな差が出ることも多々あり、不満が溜まる部分である一方、特に営業などは金融からの中途採用と親会社出向で固められている場合もあるため、彼らの存在は無下にはできない。

ちなみに、最近の業界傾向として、アセマネの独立性を気にする会社も多く、出向組は総じて減少傾向にあると言って良い。

 

もう一つ、働く人のバックグラウンド(専門性)をみると、多くは経済か商学、法学の学部か院卒。

次に多いのは、理系の院卒(数学や統計、金融工学など)。こういう人たちは計量分析に基づく運用(クオンツ運用)に将来的に配属されることが多い。

数は少ないが、文学や国際系もいる。


ちなみに勉強大好き人間が多い。私みたいに学歴ロンダのために行くのではなく、好奇心赴くままに一橋や早稲田のMBAで優秀な成績を収め、さらにそれでは物足りず、一橋や筑波で博士号を取る人もそれなりにいる。

運用部門に配属を望むのであれば(特にクオンツ)、こういう人たちがライバルになることを知っておいた方が良い。


具体的な会社は

もし興味があれば、以下のリンクをじっくり眺めてもらえれば、いいと思う。

投資運用会社要覧 | 日本投資顧問業協会

以上は日本において投資顧問業を行う会社の一覧だ。

 

ただ、ざっくりと資産規模、グローバル知名度などの観点から、日本における代表的なアセマネを挙げる。

各会社の内情、個人的な印象などについては、別記事にまとめることとし、ここでは列挙にとどめておく。

 

証券系

・野村アセットマネジメント (野村HD)

・大和アセットマネジメント (大和HD)

・岡三アセットマネジメント (岡三グループ)

 

銀行系

・アセットマネジメントOne (みずほと第一生命の子会社)

・三菱UFJ国際投信 (三菱信託の子会社)

・MU投資顧問 (こちらも三菱信託の子会社)

・三井住友DSアセットマネジメント (三井住友FGの子会社)

・日興アセットマネジメント (三井住友トラストHDの子会社)

・三井住友トラストアセットマネジメント (こちらも三井住友トラストHDの子会社)

 

 

生損保系

・ニッセイアセット (日本生命の子会社)

・東京海上アセットマネジメント (東京海上グループ)

・SOMPOアセットマネジメント (SOMPO HD子会社)

・明治安田アセットマネジメント (明治安田生命の子会社)

 

国内独立系

・レオスキャピタルワークス (SBIの子会社になったので、正確には独立系ではない)

・さわかみ投信

・鎌倉投信

 

外資系(キリがないので、ここでは非常に簡単にする)

・BlackRock (世界最大級の資産運用会社)

・vanguard

・PIMCO

・FIdelity

・GSアセット (ゴールドマンサックス系列)

・JPモルガンアセット (JPモルガン系列)

…(多すぎて手が疲れた)

 

ちなみに、信託銀行でも資産運用業はやっているのだが、現在、信託銀行で運用部門を持っているのは三菱UFJ信託くらい(三井住友信託もみずほ信託も系列の運用会社に機能移管した)ので、ここでは省略する。

 

おわりに

ざっくりした記事になったが、アセットマネジメントという業界の存在を知っていただければ、今回の目的は達成されたので、よしとする。

今後、仕事内容やキャリアパス、待遇、個々のアセマネの内情など、より詳細なアセマネの業界情報を順次更新していくことにする。

 

お読みいただきありがとうございました。