現役ファンドマネージャーの徒然帳

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自民党総裁選、意外と無視はできないゾッ!

こんばんは

自民党の総裁選が告示され、目の前に迫ってますね。
滑り込みで野田さんが出馬を表明し、ますます混迷を極めてきた総裁選=首相選挙。自民党はやりたい放題だけど、それ以上に立憲民主党はじめ、野党が雑魚すぎるので、まあ上の総裁選=首相選挙、というのはほぼ100%間違いない。

僕は新自由主義者で保守派だけど、今の自民党が保守かと言われたらビミョーだし、量的緩和万歳∩^ω^∩のリフレ派でもない、ということは先に断っておく。

さて、総裁選に向け各候補(岸田、高市、河野、野田)がそれぞれの政策を出しているが、まあ面白いかと言われたら、目覚ましいものはない。
あえて言うなら、河野になったらおじいちゃん(アベとかアソーとか)の顔を見る日が少なくなりそうなくらいか。。どうでもいい。。てか、45歳定年制(サン○リー大爆笑)云々よりジジイ定年制をまず導入しろ。あんなん画面に映されたら、4kテレビの画面が腐るわ。

話が逸れた。まあおそらく誰になっても、それなりの規模の経済政策(財政政策)が出てくるだろうし、構造改革も取り組むんだろうし、金融政策も当面は変えようがない。


じゃ、タイトルにあるバカにできないってのはなぜか?
それは、次の日銀総裁を決定する時の首相になる可能性が高いのである。黒田総裁の任期は、2023年4月まで。となると、おそらく来年の後半には日銀総裁人事の話題が出てくる。もっと言うと、雨宮副総裁と若田部副総裁の任期も2023年3月までなので、彼らの人事も同じタイミングで出てくるはずだ。


ん、それの何が問題かって?

第一に、日本含め、先進国の中銀は独立性が何らかの形で担保されている(新興国中銀は微妙なところも多い)。ただ、そうは言っても中銀のトップや、政策委員会の委員は国会の承認を必要とするため、その時の政権の志向やスタンスが反映されてしまうのが実状だ。日本にしても米国にしても、総裁候補やFRB議長候補が議会で否決されることは珍しくない。
つまり、その時の政権の金融政策に対するスタンスは日銀総裁の候補者選びに大きく影響する。

別の問題もある。これまで10年間続いてきた黒田体制後の総裁である。黒田バズーカの敗戦処理をしなければならない。
こりゃ大変だわ。。
日銀がステルステーパリングを始めて久しいが、実際にガイダンス変更によってテーパリングを始めるのはややハードルが高そうだ。ガイダンスは、期待に働きかける役割も持っているので、ガイダンス変更は、日銀に対する政策期待の剥落が出てくるだろう。コミュニケーションが大事と言ったところか。
そもそも国債購入を0にすることができるのか。。確かに超長期債への買い入れ額を減らし、コミットメントを低下させているが、10年までのゾーンは、依然として、政策効果が強く出ている。これを外した時に、どういうイールドカーブの形状、金利水準、国債需給になるのか。考えることは多い。

さらにその先の、日銀のバランスシートのことも考えなければならない。
積りに積もった国債は満期保有することで自然に減らすことができないことはない。ところが、満期のないETFやREITなど、ほぼ前例がない資産への対応を考えなければならない(実は過去に日銀が個別株を購入した事例はある、金融政策としてではないが)。仮に、そういった金融引き締め方向に政策を傾けることが難しいとしても、2%のインフレ目標達成に向けた新たな政策、もしくは2%目標に変わる新たな目標の設定など、相当ハードルの高いことを求められるだろう。
私含め、多くの市場参加者は、日本が現在の経済構造では2%にインフレが到達するとは思っていない(はずだ)。となると、日銀だけの政策では、既存の目標は達成できず、政府との連携(構造改革)が重要になってくる。

つまり、直ぐではないが、来年度以降の金融市場のモメンタムを変えうると言うことだ。
まあ正直なところ、日銀の企画局は何らかのオプションを用意してそうだけどね。頭いいし、内部の人たちは。きっとYCCみたいなファッ‼︎というような秘策があるに違いない。

私が知っている情報から判断する限り、まず、岸田・河野か高市かで日銀総裁の傾向が変わってくると考えている。(野田は直前すぎてキャッチアップできてない。。)
高市が首相となれば、黒田総裁と思想が近い人が選ばれる可能性が高いだろう。高市が、リフレ派的な思考の持ち主であるからだ。
リフレ派のエコノミストたちの中での高市支持が高いことも、高市になれば、現在の金融政策スタンスが引き継がれると考えている裏返しと思っている。
そのことから考えると、黒田総裁はもうやる気がないので3期目はないだろうが、おそらく雨宮副総裁が横滑りで相殺になるのではないだろうか。

岸田・河野が首相になった場合、これは難しい。彼らは現在の金融政策に対して、多少なりとも副作用を気にしている側面がある。
正直、河野とか金融政策に興味がなさそうなのだが、高市が首相になった場合と比較して、リフレ派の人が総裁になる可能性はグッと低下すると考えている。
となると、仮にそういった量的緩和やマイナス金利に否定的な思考を持っている人が総裁や副総裁になった場合、さあどうなるか。
現在の日銀審議委員の構成を見る限り、リフレ派が多数派であるので、リフレ派以外の人が総裁になった場合、政策委員会の意見統一が今まで以上に取りにくくなるだろうし、どっちに転ぶかも読みにくくなる。総裁のスタンスと違う方向にはならないだろうが、多少なりとも政策の不確実性が高まるのだ。マーケットは不確実性を嫌う上に、リフレ政策からの脱却となれば、2023年以降、金融市場への影響は少なからず出てくるだろう。


最後に、短期的な金融市場への影響をざっくり整理する。

株価への影響を考えるのは非常に難しいが、最初のうちはご祝儀相場で今の上昇局面がもう少し保つ可能性があるだろうが、そのあとは税制と経済政策次第といったところか。岸田が一番株価にとってはポジティブと考えている。高市は金融資産への課税とかを言っているようだし、ちと怪しい。
日経平均も高値圏にあり、利食いもそれなりにあるだろう。少なくとも証券会社が主張している32000〜33000円に到達することは無いと思っている。債券畑の人間は株価に悲観的な傾向にあるから、ご承知おきをw

金利への影響はどうか。これは財政拡張による国債増発懸念と、日銀の政策スタンス、景気の先行きなどを考える必要がある。
国債増発懸念という意味では、規模にもよるが、岸田、高市は国債増発となる可能性があり、金利上昇材料である。
日銀の政策スタンスは、目先は変わらない。上で散々煽っているが、少なくともあと1年半は黒田総裁である。やる気の無いじーさんの元で、現行の金融政策の維持がなされるだろう。細かいことを入れば、輪番の減額は今後もあるだろうが、YCCなどがなくなるわけでもなく、大きなトレンド変化にはならないだろう。

となると、短期的には岸田・高市なら金利上昇、河野なら横ばいレンジ相場といったところか。正確にいうと、超長期ゾーンは金利上昇圧力がかかりやすく、イールドカーブのスティープ化懸念が強まるといったところだ。
あくまで個人的な意見だけど、マーケット全体がいまスティープ化のポジションに傾いているかと言われたら、そうではない。


僕は願望込みで、河野あたりが総裁になる可能性が高いと思っている。が、本当にわからない。候補者ですぎ。
なので、僕の総裁選に対する債券のポジショニングはニュートラルでござんす。

今日はこんなところで。みなさん良い連休を。

P.S.
以前の記事でも言ったが、個人的にはアカデミックな人に総裁、副総裁になってほしいと願っている。博士号持っている人がいない政策委員会なんてちょっとお話にならない。今の審議委員の中に、自力で経済モデル構築してマクロ予測できる人がいるのだろうか。。(9人中多くて4人、少ないと2人だろうな)
ちなみに、修士号と博士号のレベルやそれらの扱いがどれだけ違うかは、アメリカの大人気コメディ『the Big Bang Theory』を見て貰えばわかる。